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Channel: 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
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第9回 月例試合を終えて〜卓球のトップ選手のような…

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第9回 月例試合を終えて

 

   緊急事態宣言下、9回目の月例試合を終えた。今回は、コロナウィルス感染者の増加と猛暑の影響で参加者は少なかった。だが、昇段の組手実績を積みたい参加者もいることから、月例試合を実施した。もちろん、喚起、消毒、マスク着用、無観客、定員制、密集を避ける、などなど、感染対策には万全を期した。  

 実は、ここ1週間、私は体調がすこぶる悪かった。猛暑による熱中症ではないかと疑ったぐらいである。リーダーである私がこんな状態では道場生に申し訳ないと思う。そして道場生の方々から元気をいただいていることに感謝したい。  

 

  さて、月例試合の結果だが、参加者は少しづつ顔面ありの組手法に慣れてきたようだ(今後が楽しみである)。だが、ヒッティングの目指すところは、極真空手の弱点を補完、補修することである。その弱点とは体力に頼りすぎるところだ、と言っても良い。断っておくが、極真空手の体力を追求する面は、極真空手の良いところでもある。それゆえに厄介なのだ。もう少し具体的に述べれば、現在の試合方法では、体力でなんとかなってしまう。それゆえ、攻防(攻撃技と防御技の運用)のスキル(技能)が発達しない。この点を改善しなければ、今後、極真空手の武術・格闘技としての価値は下降していくに違いない。そのため、私は新しい組手法・試合法を考案した。なぜなら、技術、技能の更なる向上は、試合方法を変えなければ困難だと思ったからだ。

 

【卓球のトップ選手のような…】

 ヒッティング方式の組手法は、力(スタミナやパワー)に任せて撃ち合うのではなく、機を捉え、より精度の高い打撃を行うこと。また高度な応じ合い(受け返し)の技能を養成することを目標としている。例えるならば、卓球のトップ選手のような、高度なラリー(応じあい)ができるようになることだと言っても良い(実際の卓球は変化球への対応など、ラリー以前に想像を絶する難しさがあるようだ…)。また、そこに至るための修練を行うことにより、極真空手を補完、補修し、さらに良いものとしていくのである。その意味では、まだまだの状況だ。

  

 今後、ヒッティング組手法が他の組手法と比較して、その違いが明らかになるラインまでにはもう少し実験(修練)の量が必要だろう。しかし、試合データが集められてきている。試合参加者には、試合データと映像により、試合結果を振り返りつつ課題を見つけ、その課題をクリヤーしてほしいと思っている。

 

 その今回の試合データをみると、攻撃が顔面への突き技に偏っている。私の想定では、ヒッティング方式の組手では顔面突きに慣れてくれば、蹴り技も効果的となる。特に下段回し蹴りは有効なはずだ。さらに突き技と下段回し蹴りが使えるようになれば、上段の蹴り技も有効、かつ効果的な攻撃だと考えている。さらに言えば、今回の参加者の「技あり」のほとんどが顔面への突き技となっていたのは、参加選手の得意技が一致したというようことではないと思う。誤解を恐れずに述べれば、参加選手の蹴り技の技能が低いことと顔面突きの攻防スキルが不十分ゆえだと思う。今後、その点を検討し、かつ指導方法の修正と工夫をしたい。

 

 

 

デジタル空手武道通信第52号・編集後記

 

  現在、私はヒッティング方式組手法の教本を制作中である。これまで、難しいことを伝えることを遠慮していた。だが、今後はどんどん先に進みたい。なぜなら、全員ではないにせよ、一定数、ヒッティング方式の組手試合の経験者を確保できたからである。そして彼らをさらに上達させることを優先することが戦略的に良いことだと思っている。新しい組手方式に熟達した者が増えてくれば、皆、それに刺激を受けて、上達すると思うからだ。補足を加えれば、本来、やる気があれば、また自らが上達のイメージさえあれば、あとは上達は時間の問題だと思う。

 

 問題はヒッティング方式の組手法の有用性とその上達のイメージを描かせることができるかどうかである。換言すれば、どんな組手が良いのか、どんな戦い方が良いのか、というイメージを描けるようにすることが肝心だということである。

 

 断っておくが、ヒッティング方式の組手は、伝統的な寸止め方式の組手法からも技術を取り入れてはいるものの、その戦い方は、基本的に異なる。あえて言えば、MMAの戦い方から組技を無くした戦い方に近い。ゆえにフック(カギ突き)やローキック(下段回し蹴り)が認められている。本来は、極真空手を行っている人は順応しやすいはずだ。だが、ここ30年あまり、極真空手の組手戦術があまりに接近戦に偏向しすぎて、間合いの調節のための前後の足使い(フットワーク)が無くなってしまった。そのことには大変な弊害があると思っている。一方、草創期から発展期にかけての極真空手は、蹴り技が発展した。その技術はまだ有効だ。その技術を活かしつつ、不十分な間合いの調節能力、動きの中で突き技を正確に当てる能力を発達させれば、まだ極真空手は発展する。だが、そのことに気が付かないならば、発展の可能性は低い。はっきり言って、衰退するに違いない。

 

 私は極真空手方式とヒッティング方式の2つの組手法を両立させたいと思っている。

そして私は空手の可能性に挑戦し、新たな地平を開拓したいと考えている。まだ新たな地に至る地図は完成していないが、必ず残しておきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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