レスリング界とその関係者は柔軟だ!!
オリンピック実施競技の残り1種目にレスリングが残った。
先日の2020年オリンピック開催地を決定する会議の後、投票でそれは決まった。
私は、レスリング競技のオリンピック中核競技からの除外を聞いた時、とても驚いた。関係者によれば、その兆候、警告があったようが、それに対する対応を国際レスリング連盟が怠っていたようだ。
私が今回、レスリング界に敬服したのは、その対応の迅速さと柔軟性である。
国際レスリング連盟は、IOC理事会から中核競技からの除外を宣告された後、
すぐに、会長を退任(解任かもしれない)させ、新会長を立てたらしい。
そして、観客へのわかりやすさ、アピール度という「オリンピック競技に、よりふさわしくなるためには?」という部分にテコいれした。私は、競技の普及度もさることながら、そのような部分を充たすルールの創設がオリンピック競技には、重要だと考えている。
また、競技のインフラを含め、今後も競技が継続、発展可能かということも、オリンピック競技にふさわしいかどうかの判断材料であると思う。
一方、競技者や指導者はルールが変わるということを嫌う。なぜなら、ルールの変更に伴い、練習法などの変更を余儀なくされることがあるからだ。
しかし、レスリングはそれを断行した。勿論、それができたのは、競技の基盤が確立されているレスリングだからだという人もいるだろう。しかし私には、そこがレスリング関係者が本物のアスリートの証明であると思っている。ここではこれ以上、このことについての論及をしない・・・。
さて、レスリングルール、改正点の第1は、2分3ピリオドの2ピリオド先取制から3分2ラウンド(ピリオドと言うらしいが、ラウンドという言い方の方が良いと思う)の総得点差制にしたことだ。
次に、相手のバックを取れば2ポイント(?)与える。また、タックルから相手を持ち上げると3ポイント(?)等々、レスリングの技の中でも、観客にわかりやすく、特に優れたものにポイントを与えるということだろう。そして、3分2ラウンド、6分の中で、レスリング技術を競い合う。また、7ポイントを先取すればテクニカルフォールとなる。詳しいルールは、これから調べたい。
また、レスリング関係者は、アメリカやロシア、そしてイランを初めとするミドルイースト(中東)の人達と、協力し合ったらしい。
これは、現在のアメリカとミドルイーストの国々との緊張関係を考えれば、とても素晴らしいことである。
書けば、「はあ」という話かもしれない。しかし、この柔軟性と行動力は各界のリーダーも見習って欲しい。リーダーを解任したり、ルールを大胆に改正したりするということは簡単なことではない。
私には、レスリングの第一人者と交流がある。私のレスラーに対する印象は、他のジャンルの人達に比べ、柔軟な感じがしていた。今回の件で、更にその印象を強くした。
レスリングは、格闘技として考えた時、相手の身体、動きを支配し、フォールを奪うと云う戦略的ゲームである。一方、剣道や空手は見事な一本を目指すと言う戦術的なゲームだ。言い換えれば、前者は枠組み、全体を眺める視点が生じやすいのに比べ、後者は、技術の巧緻性や局面・細部に拘る視点が生まれやすい。補足を加えれば、同じ空手でも、顔面を打ち合わないフルコンタクト空手は、ゴールがとても不明瞭な構造になっているので、判定が多くなり、細部に拘るというより、印象に拘り、かつ重要視される。そのような観点で、武道を含めた格闘競技の構造を私は見てきた。
レスリング競技は、数ある格闘競技の中でも最も戦略的なゲーム性を持っていると思う。
一方、見る側としては、ルールがわかりにくいと思っていた。
レスリング界が今回のような難局を切り抜けられたのは、最も格闘技としてプリミティブな構造を有し、かつ戦略的視点を有する、レスリング競技を生き抜いてきたレスラーが頑張ったからに違いない。また、そのようなリーダーが存在するレスリング界だからこそだと、思う。
さらに、オリンピック競技にふさわしいか?という価値基準には、女子選手の存在が重要だ。そういう意味では、女子レスリングを育てた、日本レスリング協会・福田会長の功績は大きいと思う。また、吉田を始めとする日本の女子レスリング金メダリスト達の存在、活躍がレスリングのオリンピック競技存続に影響したことは間違いない。
蛇足ながら、レスリングが採用した、相手のバックを取れば、ポイントを与えるというルールは、私が普及するフリースタイル空手のルールと同じである。
私は幼少の頃、レスリングと接したことがある。その時、素晴らしいと感じたレスリングの技術のひとつが、相手のバックポジションを取るということであった。この技は、スタンディングの状態、立ち技の格闘技にも使えると、兼ね兼ね考えてきた。また、相手の動きを支配し、戦闘力を奪うという価値基準から考えれば、テイクバックは、もっとも観客にわかりやすい技だと考えた。また、優劣がつけやすい技のひとつだと思う。ゆえにフリースタイル空手に取り入れ、得点を与えることにしたのだ。
私は、これまで星稜高校の馳先輩の師匠にあたる金沢の高村コーチや早稲田大学の太田章先生、国士舘大学の朝倉先生と縁をいただいた御陰で、レスリングの素晴らしさを身体で感じている。本当にレスリングがオリンピック競技に残って良かった。
蛇足ながら、先週の日曜日、国士舘大学レスリング部監督の朝倉先生と祝杯をあげた。朝倉先生は、いつも私にやさしい。本当は朝倉先生のところでレスリングも勉強したいところだ。しかし私は、新しい武道スポーツの創出と云う、途方もない夢を描いてしまったので、皆さんが想像している以上に、すべてに余裕がない。もう少し、頑張らなければならないが、もそろそろ限界がきている。まあ、人間は必ず死ぬ。悔いのないよう締めくくるつもりだが・・・・。
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レスリング界とその関係者は柔軟だ!!
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