師を思う
師が言った
リーダーに必要なことは
愛と誠実だと
師が言った
人間として何が正しいかを
判断基準にせよと
だが、そんなリーダーがいるか
愛ではなくて私情
誠実ではなくて打算
今、世界中に
きな臭い匂いが立ち込める中
私は確信する
世の中の 中心には
愛の意識が
必要だ
行動の 規範には
誠実の意識が
必要だ
そして判断に迷った時は
人間として何が正しいかを
問うことが必要だ
稲盛和夫
本当に 偉大な
師を失った
叶わぬことだが
師の気魄に
もう一度触れたい
(心一)
デジタル空手武道通信 編集後記 第64号
先日、京セラ、KDD Iの創始者、稲盛氏が亡くなった。
実は、私は稲盛氏が主宰する経営者の塾で図々しくも10年以上も末席を汚していた。
塾の草創期はまだ塾生も数千人と少なく、稲盛氏の話を数メートル前で聞くことができた。私のような市井の人間にとって信じられないような経験だった。
稲盛塾長には先輩塾生の後押しもあって、私の主催する空手道大会の名誉会長を10年間務めていただいた。本当に僥倖だった。そんな幸運を手にしながらも、私といえば、いまだに掲げた理想が実現していない。稲盛塾長には恩返しとして、理想の実現を果たして見せたかった。
一方の盛和塾は、私が入塾した頃から数倍に発展した。また晩年、稲盛氏は日本航空の再建のために尽力し、見事再建を果たした。こんな空手家と話す暇はなかっただろう。それでも、私はいつも稲盛氏に恩返しをしたい、と思っていたが、ついに果たせずじまいだった。
ある日のこと、稲盛氏が私に微笑みながら言ってくれた。「お前さんは大丈夫だよ」「みんな助けてくれる」と。そんな優しい言葉をいただいた日がとても懐かしい。今、テレビで稲盛塾長の在りし日の勇姿を見ると、なぜか涙が溢れてくる。私は駄目な人間だと。だが、同時に「誰にも負けない努力をする」「愛と誠実」の教えを心に頑張れ、と声が聞こえている。
師の教えを胸に、もう少し頑張りたい。