その4
【柔道界だけの問題ではない】
今回、女子選手達に、どれほどの覚悟があったかは、実際のところわからないが、男性には解らない、苦悩があったに違いない。だが、自分の娘の苦悩だと思って、応援したい。
この問題は、「柔道界だけの問題ではない」と・・・。
私は、今回の女子選手の行動の意味は、悪しき封建時代ような組織体質に対する違和感と意義申し立てなのだと思っている。しかし、時代劇のように、闇に葬り去られるに違いない。体裁だけ整えて。
【フランス柔道】
ところで、フランスの柔道人口は80万人、日本は20万人だという。その差を生み出す要因について、今回の問題と併せ、考えてみる。
先ず、フランスは社会主義の国である。つまり、人権思想が強く、個人の立場や権利を尊重する。そのような国では、暴力によって人を従わせるという事を、下等な事だと考えているのではないだろうか(先進国なら当然の感覚ではある)。
また、日本のような、上位の者しか意見を言えないという空気が無いのではないか。自然、組織のルールも日本とは異なってゆく。例えば、柔道の練習方法も選手自らが考え、選択するということを重要視するというように。
さらに、フランスにおける柔道指導は、子供から老人まで、まさしく生涯スポーツとしての指導を基本にしていること。また、フランスでは、柔道に人間教育の一環を担わせるという認識があるようだ。
以上のような要素が、4倍の差となっていると、私は観る。それは同時に、柔道が可能性に富む、魅力的なスポーツである証拠でもある。
ここまで言っても、「それはフランスでのことであって、日本には、日本のよい点がある」。また、「どの国も、その風土にあったやり方、文化がある」と言われる人もいるかもしれない。確かに、そのような面も否定はしない。
さらに、「人口が少なくてもメダルの数が我々の方が多い」「柔道精神は、目上の人を敬する事が重要であり、フランスより日本の方が、その精神が浸透している」等々。反論の声が上がるに違いない。
おそらく、日本側は、自分たちの不足点を認めないだろう。もし、私の想像どおりだったら、山口女史以下、15人は討ち死にだ。
この問題の本質は、柔道界や日本スポーツ界の人間育成システム(人間教育システム)のみならず、日本の人間教育システムの問題だと観ている。
【今回を機に~】
私は、今回を機に、日本における、スポーツのあり方を見直しをしてはどうかと思っている。
具体的には、チャンピオンスポーツ、学校スポーツとして、発展してきた日本スポーツのあり方を見直すということだ。
僭越ながら、もっと時代にあったスポーツの展開方法があるはずだ。更に云えば、大学教育を始め、学校教育も見直す時期ではないだろうか。教育は、国家、100年の計の支柱である。
具体的に言えば、地域社会における、生涯スポーツ(国民体育)、又、スポーツの世代間コミュニケーション・ツールとしての効用を考え直してみてはどうだろう。サッカー、Jリーグの展開方法等はとても参考になる。
しかし、そこに立ちはだかるのは、有力なスポーツの多くが、学校スポーツとして展開されてきてたことによる、様々な既得権益、利害が発生しているという現実だ。
よって、そう簡単に片付けられはしないこと、話を進める事の困難は、想像がつく。しかし、構造改革の第一歩を進めることぐらい、できるだろう。
【ホウセンインギョク~私の提案】
もう少し、「抛磚引玉(ホウセンインギョク、私が好きな中国の言葉で、意味は、自らの稚拙な意見を投げ出し、皆の優れた意見を引き出すという意味)」を行ないたい。つまり、私の提案を投げだす。
まず、フランスのスポーツ界のようにスポーツを一つの連盟で纏めること。現在、日本体育協会があるが、その組織も形骸化している感が否めない。ゆえに再編成するか、別のすべてを包括するような組織を創ったらどうだろうか。
さらにヨーロッパの国で採用されている、スポーツ省のようなものを日本でも創設することも一案かもしれない。それは、決して税金の無駄遣いにはならない。無駄な地方議員の数を削減すれば、すぐにでも実現できる。
そのようにして、細分化され、たこ壷化した各界の可視化を図り、連携できるようにするのだ。また、チェック機能の強化も必要だろう。なぜなら、スポーツや芸能の世界は、とかく権力構造を生じ、腐敗しやすいからだ。
それが、今一歩、スポーツへの理解が進まない原因の一つではないかと私は思う。
言うまでもなく、スポーツは重要な外交カードになり得る、また、国際貢献に繫がるだろう。
周知のように、我が国は、経済的には、世界のトップ水準である。又、文化レベルもトップクラスだと思う。しかしながら、スポーツやスポーツ選手に対する理解、リスペクトに関しては、世界標準に至らないように感じるのは、私だけだろうか。
私はまた、スポーツの価値を高めるための鍵として、スポーツを学校スポーツやプロの壁を取り払う事を提案したい。大変な作業になると思うので、政府がサポートしなければならないだろう(本当は民間だけでやれれば良いが、上下意識の強い日本人には民主的な活動は難しいだろうから)。
そのキーコンセプトは、「すべての世代が共に」というものだ。つまり、スポーツを老壮青少、子供から大人まで、生涯に渉るもの、あらゆる世代を繋ぐものとして考えるという事だ。
そのような組織や構造を構築すれば、スポーツは、社会にとって、無くてはならないものになるだろう。
最後に、今回、山口香女史が行なった柔道界に対する変革の提案は、大変、勇気のいる事だと思う。これまで、長々、書いてきたが、私の言いたい事は、一言で片がつく。
それは、「山口女史のような、真に斯界を愛し、志の高い女性(人間)を見殺しにするな」という事だ。そんな日本、日本人は、大嫌いだ。
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柔道家、山口香女史を応援する〜その4
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