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Channel: 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
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アスリートとは何者か?〜柔道家、山口香女史を応援する、その2

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13-2-11ブログ続き

さて、本題に入る。

柔道界の問題に関して、世間では、性的暴力は論外として、体罰を完全な暴力と認定することに、戸惑いがあるようだ。

事実、体罰の是非に関する、新聞、テレビのアンケートによると、絶対反対派と一部容認派で二分している。

また、「そもそも、五輪代表選手は、自分の弟子ではない、預かった選手を、自分の弟子のように扱うことが良くない」というような意見もある。

もっともな意見だが、そのような意見は、自分の弟子だったら、体罰は良いという考えであり、体罰一部容認派であろう。

【15名の女子選手の異議申し立ての意味?】
私なりに、女子柔道日本代表選手15名の異議申し立ての意味は、何であるか考えてみた。

これまで、幾多の困難を乗り越えてきた、アスリート達の尊厳・プライドの問題なのだろうか? 勿論、そのような個人のプライドも尊重しなければならないのは、当然である。

一方、「日本代表たるもの、金メダルを取るために、鬼とならなければならないのでは」と、あえて反対意見を挙げて見る。

つまり、日本代表選手が、もし、気の入らない稽古をしていたら、一喝したくなるのでは、という意見だ。

しかし、例え、そのような事が、仮にあったとしても、猿回しの猿であるまいし、暴力や恫喝は、良くないと私は思う。「猿回しだって暴力は使わない」と、猿回しの方にお叱りを受けるかもしれないが・・・。

【アスリートとは何者か?】

少し脱線するが、私は、「アスリートとは何者か」と考えてみた。

その結果、「アスリートとは、競技に集中する事で、心身の解放と人間の自由に到達し、かつ、それを表現する者である」となった。また、「アスリートとは、心身の限界に挑戦する事で、その不自由を乗り越え、真の自由を獲得する者である」という事が加わる。

そこには、自らが考え、行動し、掴み取っていくというイメージが浮かぶ。

つまり、他者から強制されたり、人に頼ったりする事は、アスリートとしての理想から遠ざかるということ。同時に競技スポーツの理想から遠ざかるという事でもある。

極論すれば、人からの評価さえ、気にしてはいけないように私は思う(人の応援や期待を喜びに感じる事は構わないとは思うが・・・)。

さらに突き詰めれば、もし、オリンピックゲームがスポーツとアスリートの理想を表現するものであるならば、その目的は、国や人のためではないはずだ。

しかしながら、その純粋に自分のための行為が、他者に対し、勇気を与える。さらに、選手同士、観客同士が人間の可能性と普遍性を共有することで、人類は仲間だという実感を与える。

そのような事が、オリンピックゲーム、そして、スポーツの理想ではないだろうか。

話を戻せば、オリンピック選手のみならず、スポーツ選手は、猿回しの猿ではない(猿回しの方、何度も例えに使って、すみません)。

但し、社会には、猿と同等の人間が存在するのも事実である。そのような者には、体罰と言う訓練方法も必要だという方もいるに違いない。


しかし、それはスポーツではない。また、人間教育という事とも異なる、私は、それを人間訓練と言って区別した方が良いと思う。

ここで、私の意見に少しぶれがあるように感じる方もいるかもしれない。
それは、最低限の社会生活もできないような人間に対する、人間訓練の必要性が念頭にあるからだ。しかし、そのような者に使う体罰も“愛の鞭”ではないと言っておく。それは、まぎれもない暴力なのだ。その場合の体罰は、暴力によって、「人間と社会をなめると大変な事になるぞ」という、ある種の注意喚起を暴力によって促している場合が多いと思う。

私の考えだが、残念ながら、人間と社会において、暴力が現出する可能性はなくならない。ゆえに、我々は、暴力の本質をしり、それが現出しないよう、暴力性の昇華に対する智慧を持たなければならない。

柔道の創始者、嘉納治五郎が唱えた、「精力善用」の意義も、暴力性の昇華にあると、私は考える。

今回、異議申し立てをした女子選手には、単に暴力やセクハラの問題としてのみならず、将来の柔道界やスポ―ツ界を見据えた、問題提起をして欲しいと願っている。

山口女史はそのような考えで行動しているはずだ。

ただ、繰り返しになるが、このままでは、女子選手と山口女史は、見殺しになるかもしれないと危惧している。

(長くなるが、さらにこの問題について、日本人論を加えた意見を述べたい)


$増田章の『身体で考える』


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