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Channel: 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
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人生万事塞翁が馬

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【困難とは】

 

 台風19号の爪痕が痛々しい。

被害に遭われた方々には、心からお見舞い申し上げたい。

 

 今回の台風に際し、私は土曜日から予定していた道場合宿を急遽中止した。実は、この合宿は来年の私の仕事の命運を占うような重要なものだった。

 

 実は、合宿内容に関して、私は大変に悩んでいた。それは現在の道場生のレベルで私の考えている空手道が理解できるかという懸念である。

 

 合宿の数週間前になって、ようやく決心がついた。同時に私の身体は限界点に近づいていた。私は今、私の空手道の理念と哲学、そして修練体系を明確にしておきたいと強く願っている。なぜなら、これ以上皆を引っ張って行く自信がないからである。

 私は幼い頃から闘争心が強い。それは自分の人生を台無しに仕掛けた。かろうじて軌道修正ができたのは極真空手と出会ったからである。

 

 私は極真空手のレベルの低さに、「これも大衆の求めることなのだ」「大衆が求める物を使い、人心を掌握して行くことが良いことなのだ」と自分に言い聞かせようとしてきたが、もう限界である。その理由を今、詳しく述べることはしない。だが、ラグビー界の躍進と日本代表の選手達の頑張りを目の当たりにして、「このままではダメだ」という思いが強くなっていることだけは確かだ。そんな中、わずかな道場生を率い、私の理念と技を伝えたいと思っていた。

 

 それが中止になり、とても残念である。振り返れば、これまでの人生も「困難」だらけだった。そんな人生の中で、「困難」に際しては、これは良いことなのだと思うような性癖がついた。言い換えれば、「困難とは何かを伝えてくれる機会」。また「困難とは新しい何か、また大切な何かを見つけ出す機会」だと思う習慣がついている。私はみんなに「困難だと感じたら、すぐに視点を切り替えろ」と言いたい。だが、問題は「困難」だと感じない人が大勢いると言うことである。否、地位が高く、お金を持っている人ほど、その感覚が鈍いように思う。

【人生万事塞翁が馬】

 私は半生を綴った拙著で「人生万事塞翁が馬」という言葉が好きだと書いた。

それは、何事も現時点の視点だけではわからない。長期の視点で考えること。また多様な視点で考えることが大事だということを、人生の中で感じたからだ。

 

 今、私の身体はあと少しで右足が使えなくなるかもしれない、という状況の中だ。それでも、私は来るべき勝負の時に備え、鍛え続けている。

 トレーナーには、使い過ぎだ。休んだ方が良いと言われた。それは正しいアドバイスかもしれない。しかし、そんなことはわかっている。しかし、そんな呑気なことは言ってられない。死んだら誰が責任を取るのだ。私は、自分を信じたい。とはいうものの、今回の台風で合宿が中止になったのはよかったかもしれないと考えている。

 

 台風の被害に遭われた方々は、本当に気の毒である。一方、私がもし合宿を実行していたら、右膝は完全に壊れていたかもしれないと思っている。さらに、考えを切り替え、その間にこれまで後回しにしていた書斎の整理整頓を進めた。

 そのことによって、頭が整理され、良いアイディアが湧いている。右膝は相変わらずだが、使いながら直したい。同時に最悪、右足が使えなくなっても戦えるような技術を考えている。端的にいえば、右手にペンを持っただけで、相手を殺傷できる技術(テクニック)と技能(スキル)を開発するということである。

 そこまで考えていくと、一般の道場生について来られるわけはない。しかしながら、そこにたどり着くためにも「ヒッティング」と言うメソッドが必要なのだ。今後も相変わらずの孤独を覚悟したい。

 だが、僅かだけれども、私の武道哲学に共感してくれる者が必ずいると信じている。なぜなら、私の考えは究極的、かつ普遍的だからだ。決して際物的ではない。

【ラグビーW杯の日本対スコットランド戦】

 さて、本日はラグビーW杯の日本対スコットランド戦がある。とても楽しみにしている。私は、にわかラグビーファンだが、リーチ選手、田中選手、松島選手、田村選手、堀江選手のファンだ。しかし、試合を何度も録画で見ていく内に、チーム全員のファンになった。みんなすばらしい。空手もそんな風に思えるようになったら良いなと思う。

 

 蛇足だが、野球は巨人と西武のファンである。西武は敗れてしまった。幼い頃からの悪い癖だが、私は贔屓のスポーツチームや選手に自分の人生を重ねてしまう。

 今回のラグビー日本代表選手の多くは困難の体験を乗り越えてきたようだ。

 

【闘争心】

 最後に、リーチ選手がスコットランド戦を前にして、闘争心を言葉に表していた。リーチ選手は合宿中でも集中力が高く、寡黙な感じだった。そのくせ、言葉を発するときは、闘争心が溢れ、かつ人の心を奮い立たせるようなキャプテンシー(統率力)があるようだ。

 彼は、テレビでスコットランド戦に際し「優しさは必要ない」と言っていた。まるで私が田村選手に見た「優しさが強さに変わった」という言葉に反するかのような言葉だった。リーチ選手の直感は正しい。勝負には何より闘争心が必要なのだ。だが同時に、真の戦いには優しさも必要だ、と言うのが私の考えである(いつか説明したい)。

 

 だが、あえて言う。「闘争心は必要だが、冷静さも必要だと」具体的には、闘争心を空回りさせて、反則やミスをしないこと。また、怪我も心配である。

 さらに相手の焦りやおごりの気持ちや戦術を透視することを忘れないことが重要だと思う。つまり、試合において相手を見切ることである。その上で、これまで積んできた自らの戦術を無心に遂行するような集中力と冷静さが、闘争心以上に重要だと言うことを書いておきたい。ラグビーや格闘競技は相手を○さない、○しあいだ」と言ってもよいだろう。相手に臆してはいけないのは当然のことながら、決してカッカせずに、冷徹に仕事をして欲しい。

 

【対峙(Opposition)ー透視(Perspective)ー創造(Creation/Breakthrough)」の原則】

 もう少し言えば、アイルランド戦もそうだったが、相手の強みを認めつつ、しかしそこを絶対に発揮させないと言う、冷徹な判断力。そして自らの戦術を120パーセントの力で遂行する集中力を発揮してほしい。そして、「対峙(Opposition)ー透視(Perspective)ー創造(Creation/Breakthrough)」の原則でクリエイティブなラグビーを実現して欲しい(上から目線で偉そうだが)。今回のジャパンチームならできる。

 

 また、多くの人が応援しているが、あまりそれを気にかけず、それを力に変えて欲しい。自分の人生を背負えるのは自分だけだ。それを忘れないで、とにかく力を出し切って欲しい、と願っている。ラグビーオールジャパンの戦いに勇気を得ている一人として…。

 

 

 


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