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Channel: 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
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組手力〜月例試合において

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 増田道場では月に1回、本部道場においてヒッティング方式の組手試合を行っている。私の道場ではコロナパンデミックが始まってから、飛沫感染防止のために防具を使った組手法を実施している。その組手法は、空手武道の原点回帰を意識した組手法である。私も老人の入り口に入った。そんな中、我が門下生に何を残すかを考えたときに、もっとレベルの高い空手武道を残したかった。「そんなもの欲しくない」「これまで通りやれ」と思う門下生もいるかもしれない。だが、申し訳ないが、私はこれまで研鑽してきた努力を無駄にしたくない。何より、その研鑽もまだ不十分である。また、私自身の芸道(武道)のレベルが、さらに高まり、かつ、深まると思っている。また、本当の戦いは老人の域に入ってからだと思っている。だが、その戦いは、相手を叩きのめす戦いではない。また、その戦いとは、相手を活かし、かつ、自己も活かすための戦いである。ただし、ここでいう戦いとは、言葉で表せば矛盾するが、戦わない(争わない)ための戦いと言っても良い。私は、それが平和の姿であり、安心立命の姿だと考えている。そして、その境地を目指すことが拓心武道だ。

 さて、5月29日に3ヶ月ぶりに月例試合に参加した小学生、中学生、高校生に対し、なんとか組手に上達してもらおうと、直前にスピーチを思いついた。直前に思いついたので、拙い表現となったと思う。試合後、デジタル空手武道通信用に文字に落としてみた。その内容を以下に掲載したい。

デジタル空手武道通信 第60号

 

組手力〜月例試合において

 

【増田道場における組手修練の目的】
 

 先日、昇段認定のための組手動画を見た。しかし、その組手を見て、私の考える組手修練の目的が理解されていないと感じた。それは、私の伝え方が下手だからだろう。ゆえに、3ヶ月ぶりに実施した、先日の月例試合の冒頭に「組手修練の目的と組手力」について述べた。
 増田道場では、月に1回、組手試合の機会を設けている。本部道場の広さの関係で定員は20名までだ。久しぶりの試合で参加者は少年部、中学生、高校生のみで、しかも定員に達しなかった。だが、みんな上達していたので、見ていて楽しく、また嬉しかった。

 ここで改めて極真会館増田道場の月例試合の目的は、昇級昇段のための組手技能の向上と顔面突きありの新しい組手法に慣れるためだということを述べておきたい。その目的を達成するため、今回、私は組手修練の目的と組手力について説明するための概念用語を考えた。正直、小学生には難しいと思ったが、皆理解できるという。もちろん完全に理解はしていないだろうが、ある程度は理解しているようにも見えた。問題は、他の道場生には理解していない思うので、その内容をいかに簡単に述べておきたい。

【拓心武道の組手力とは〜決定力を磨く】

 まず、増田道場における組手修練の目的は、試合に勝つことを目標・手段として、「組手技能を高める」ことにある。つまり組手技能を高めることが目的であり、その目的達成のための勝利という目標・手段は目的ではないということでもある。この部分が逆転すると「組手技能の上達」に必要な自己分析はできない。言い換えれば、「技」が高まらないし、深まることはないだろう。

 次に、ここでいう組手技能とは「組手力」と言い換えても良い。繰り返すが、この組手力を理解するには、「組手力=試合に勝つこと」また「組手力=相手に攻撃をうまく当てること」と考えてはならない。多くの者が組手力の高低を未熟、かつ、曖昧な判断基準により測っている。そこで組手力を判断するために、組手力を6つの要素に分けて考えることとする。

 その6つの要素とは、1)技に応じる力(応じ力)2)技を読む力(読み取り力)、3)技を誘い導く力(誘導力)、4)技を崩す力(崩し力)5)技を封じる力(封じ力)、6)技を決める力(決定力)だ(月例試合の時と順番を変えた)。
 補足を加えれば、1)の技に応じる力とは、相手の技に防御技を使い応じる技能のことである。2)の読み取り力とは、相手の技をいち早く読み取る技能のことである。3)の誘導力とは、相手の技を囮技を使って相手の技を誘い導き、その導いた技に応じる技能である。4)の崩し力とは、相手の技を攻撃したり防御するのみならず、相手の態勢を技によって弱い状態にする(崩す)技能のことである。ここでいう弱い状態というのは、防御したり、反撃したりすることが困難な体制にすることでもある。5)の封じ力とは、相手の技を間合いを外して無力化したり、技を使って出せなくする技能のことだ。6)の決定力とは、1〜5の組手力を使って、相手との攻防を自己が正確に理解、かつリードした上で、「今、この場所しかない」という「機」「空間」を捉えて技を決める技能のことだ。それが拓心武道でいう決定力の意味である。
 

  繰り返すが、拓心武道の組手修練において目指す理想は、この今、この場所しかないという「機」「空間」を捉える決定力を磨くことである。言い換えれば、拓心武道の目指す理想は、また、今、ここ(場所)において最高の自己表現(技)を駆使することである。もう一つ、組手力を考える上で重要な概念、認識は、組手力の6つの要素が密接に連係しているということである。たとえば、応じ力は読み取り力と連係している。また、誘導力は崩し力と連係している。さらに崩し力は封じ力に連係している。そして、相手の技を封じ力は、決定力に連係する。さらに、個々の技能の働きが縦横無尽に繋がることで、技の効果を最大とする。以上、簡単に組手力と6つの要素を解説した。
 

  今後、新しい組手法による修練を行うには、その要素を観点にして組手を観ると良いだろう。そうすれば、自分の組手力がどのぐらいかが認識できるようになる。おそらく、多くに人が相手より優れたスピードや体力を使って相手を圧倒しているだけだ。そのような要素は、格闘技的な強さに必要な要素だ。だが、拓心武道、そして増田道場の組手修練の目的においてはひとまず棚上げしている。その理由は、それを目指さないというより、さまざまな年齢、性別の人たちが一緒に組手技能を追求できるような修練法を修練の柱としているからだ。ゆえに、破壊力を養成する修練は別に行えば良い。また、この組手法の核にある拓心武術は、相手を殺傷可能な小武器(独自、かつ誰でも入手可能な)の使用により、相手殺傷力(破壊力)を強化して技能を行使することを包含している。
 この意味が理解できない人は拓心武道の組手修練の目的・意味も理解できないかもしれない。そして、組手力は低いままだ。また、この武術的な組手力を体得することができれば、格闘技者としてのみならず、人間として、少し高いステージの登ることができるのではないかと思っている。

【私自身の組手力】

 我が道場生に対しては、まずは応じ力を向上させることを勧めたい。そのためには組手型をより多く知ることが有効だと思う。そこからしか読み取り力、他は要請されないだろう。また、参考までに、私自身の組手力を評価すれば、以下のようになる。

 私の組手力のおける「応じ力」は中程度である。そして「読み取り力」に関しては、応じ力のレベルに合わせて読み取ることもできているようにも見えるが、実は応じ技の想定していない技に関しては読み取ることが困難かもしれない。ゆえに、戦術のデータベース増やしたい。その上で、攻防が連続し、流れ(展開)の中での読み取り力をさらに強化したい。次に誘導力だが、「誘導力」は相手に応じ力が備わっていなければ効力を発揮しない。ゆえに技能のある相手と組手をしなければ訓練にならない。現在、組手の相手となる我が道場生の応じ力は高くない。なぜなら組手型をよく理解していないからだ。つまり、組手型の中身である戦い方の原理原則が理解されておらず、行き当たりばったりの組手(出たとこ勝負の組手)だからだ。そのような相手との組手は反応力の訓練にはなる。その場合、その相手に瞬発力や発想のユニークさがある場合だ。また、「崩し力」については、応じ技を打撃技のみならず、倒し技を用いる時に重要となるので、現時点の打撃技のみの組手の場合は、判断が難しい。ゆえに相手意識を崩し(散らして)ことができているかどうかで判断したい。大まかな捉え方では、連係技を効果的に使えているかどうかで判断するということだ。その点では、崩し力は中程度と考えられる。そして「決定力」だが、私自身がこの部分を判断する際には、いかにスピードを落として相手を正確に打てるかを判断基準にしている。技のスピードに頼らず相手を打ち込めるということは、相手の動きを読んでいる証拠である。ただし、顔面を攻撃しない空手では、少しぐらい当たっても効かないとばかりに防御をしない。そのような組手法では、隙とは何か?ということが理解できないに違いない。同様にこの組手法の目的と理念を理解していない者にはこの意味がわからないに違いない。また、合撃(あいげき)を効果的に使えているかも決定力の判断にはなるだろう。だが、現時点では合撃(あいげき)を使うことを抑制しているので決定力の判断はできない。

 

 以上、自分で自分の組手力を評価してみた。この話を師範代の秋吉に話をしたら、要素ごとに評価表を作成したら面白いと言っていた。善いアイディアだと思うが、そこは今後検討する。まずは各人が自分の組手の内容を各要素を念頭に自らが考えて欲しい。

 

 

  最後に、私は準備が整い次第、拓心武道学校を主宰したいと考えている。目指す武道を完成させたいからだ。だが、完成させるに時間が足りないかもしれないとも思っている。また、その能力もないかもしれない。それでも、私はより高い次元の武道を目指していきたい。

 

 今、私の考える武道の方向性だけは、極真会館増田道場の黒帯有志に伝えておきたい。そして願わくは、いつか私の認識する武道哲学を理解してくれればありがたいことだと思っている。同時に黒帯有志が、未熟ながら私の創始した武道哲学を大事にしてくれるなら、望外の喜びである。

 断っておくが、私の武道哲学とは、極真会館における修行を基盤にさまざまな修練を経て到達したことだ。その極真会館という基盤を大事にしたい。だが、そのことに気づくには遅すぎたかもしれないと思っている。だが、最期まで希望を捨てずに自分の体験を活かしていきたい。それが拓心(拓真から変更)の道である。

 

 

 

組手力の6つの要素(技能)

  1. 技に応じる力(応じ力)
  2. 技を読む力(読み取り力)
  3. 技を誘い導く力(誘導力)
  4. 技を崩す力(崩し力)
  5. 技を封じる力(封じ力)
  6. 技を決める力(決定力)

     

 

 

 

 

 

 

     


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