【白兵戦において寝技は有効かどうか?】
格闘技研究の学者である菱田氏から、メールで意見を求められた。現在、アブダビの軍隊では、寝技を兵士の正規の訓練に採用しているようだ。菱田氏は「白兵戦において寝技は有効かどうか」と意見を求めて来た。その返事を掲載したい。
断っておくが、私は寝技が必要でないと考えたことはない。最低限の寝技の研究はしているつもりだ。また、私は立った状態での戦闘力を補うためにも、寝技を研究したいとも考えている。ここで掲載する意見は、あくまで理論的に考えた上での意見だ。
【私の意見~菱田氏への返事】
先ず、白兵戦自体が、現代の戦争では、かなり特殊で限定的な局面を想定していると思われます。つまり、1対1、1対多数というより、兵士の気力、体力の訓練的な意義が大きいと言ったら言い過ぎでしょうか。
勿論、あらゆる戦闘状況を想定して、訓練をするということが大前提であるは思います。しかしながら、火器が中心の現代の戦闘(戦争)では、白兵戦自体の重要性がどれほど意識されているのでしょうか・・・。
以前、「アブダビは、皇太子がグレーシー柔術のファンで、国民の士気を高める意味で、ブラジリアン柔術の普及を推進している」。そのように菱田さんから聞いたように記憶しますが・・・。つまり、寝技がどうこう言うより、好みで決めているのではないでしょうか。前置きが長くなりましたが、もし、質問の意味が、「寝技が白兵戦には有効ではないのでは?」ということでしたら私の意見を述べさせていただきます。
確かに、小武器の使用が想定される白兵戦においては、寝技は有効ではないと思います。なぜなら、立った状態の方が、より機動性が高く、多様な戦闘局面への対応力が高いからです。ただし、寝技の訓練が必要でないということではなく、戦闘局面の確率論的な、優先順位という観点での意見だということだと断っておきます。個人的には、寝技は必要だと思います。また、立った状態での格闘にも通じる原理が含まれていると思います。
以上の意見は、あくまで、限られ訓練時間における、白兵戦により有益な徒手格闘の訓練という観点です。
なぜなら、繰り返しになりますが、立ち技の格闘術の方が、より機動性が高いからです(ただ、体捌きがほとんどない、極真空手の機動性が高いかについては、疑問ですが・・・)。
さらに補足を加えれば、徒手格闘の訓練の際は、立っている状態(スタンド状態)において、いかに多面的に空間を把握できるかを基本としなければなりません。しかし、その辺の部分が1対1の勝負に偏重した、既存の武道競技によって刷り込まれた戦闘観では、理解できないのではないかと思います。
ここで私は、1対多数を想定しろという短絡的なことを言いたいのではありません。1対1であっても、空間を自在に活用するという観点が必要だということです。
現在、日本の武道競技は、格闘術の訓練というよりは、見事な技を評価することや勝者を何が何でもきめるという価値観を優先しているかに見えます。
手前味噌になりますが、私がフリースタイル空手において、「背後取り」という格闘技術を取り入れたのは、実は1対多数に対応するための格闘術を身につけるためでもあります。
「背後取り」とは、一瞬にして、正面の敵の背後に回る(位置を取る)技術です。その技は、自分の背後、左右にいる敵を、一瞬にして、正面に据える技術に繫がっているのです。つまり、この相手の背後に回るという技術が、1対1でありながら、1対多数、多数対多数でも有効な戦術なのです。また、立ち技格闘技の基盤は、突きでもなければ蹴りでもありません。機動性であると私は考えています。ゆえに、その基盤を奪われないために、「倒れない」「倒されない」ということを目標とする、フリースタイル空手を創設したいと考えているのです。
余り、適切な意見ではなかったかもしれません。質問の真意が理解できていないので・・・。すみません。
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白兵戦において寝技は有効かどうか?
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