永劫の鳥~極真空手と大山倍達先生の志を思いながら・・・
【草壁熖太先生のこと】
極真空手の黎明期、地に臥した龍のような大山倍達先生を、空高く舞い上がらせた、雲のような存在の一人、草壁熖太先生のことを思っている。草壁先生は詩人である。現在は五行歌の会を主宰され、その普及と後継者育成のため、全国のみならず、世界中を奔走されている。草壁先生は東京大学の哲学科を卒業され、新聞社に一時期務められていたそうだ。その後、出版社に入り、大山先生の本を手がけることになった。その書籍の中には、極真空手のバイブルと言っても過言ではないものがある(今、その本の存在すら知らない道場生が90%以上を占めているのが極真会の現状だと思う)。
その草壁先生の若き日には、少なからぬ苦悩と苦難があったようだ。だからこそ、その思想には人と社会の本質を捉えるものがあるのだと私は考えている。
草壁先生に初めてお会いした時、「草壁先生が代筆された大山先生の著書と出会わなければ、極真空手をやっていなかったと思う」と、私は伝えた。
私は漫画や映画を素晴らしい文化だと考えているが、書物には、漫画や映画に勝るとも劣らない力があると思っている。おそらく大山先生に思想的な著書がなければ、少なくとも私は、極真空手を始めなかっただろう。
大山先生の評価は様々だと思う。勿論、私は師の批判をする立場ではない。だが、その至らなかった部分、時間が足りないがゆえの未完成な部分をも絶賛する程、脳天気な人間、立場でもない。
おそらく、大山先生の描いた極真空手発展のシナリオ(思い)は、単なる勝ち負けや優劣を比較する手段に空手道を止めるようなものではなかったはずだ。また、単なるビジネスでもなかったと信じたい。
【「弱きを助け傲慢なものを挫く」~大山先生の描いたシナリオ】
私は、大山先生の描いたシナリオは、空手武道を日本のみならず世界の人達の人間教育に役立たせることだと信じたい。また、極真空手を世界の至る地域で「弱きを助け傲慢なものを挫く」、そんな人間を育むための手段として発展させたかったのだと思っている。
また、そのシナリオの中の空手家には、3つのゴールがあると考える(きれいごと過ぎる目標だが・・・)。一つ目は、「善き家庭人」2つ目は「善き社会人」である。さらに3つ目は、「社会の善きリーダー、政治家」である。政治家といういうと、異論や批判がでるとは思うが、社会のリーダー、社会の変革者と考えて欲しい(勿論、バカと煙は高いところを好む・・・と言うような類いの政治家は論外だ)。
ここで少し話しが脱線するが、大山先生は政治家に興味があったのではないかと、私は考えている。しかし本人も自覚していたのではないかと思うが、大山先生は政治家タイプではない。ゆえに大山先生は宮本武蔵に憧れたのだ。しかしながら、宮本武蔵がそうであったように、本当は政治家(武蔵の生きた時代は将軍だと思う)になりたかったのだと思う(一度、参議院に勧められたが、誰かの助言で断ったようだ)。また補足を加えれば、社会人の中には、カラテの先生も含め、教育者や公務員、学者等、社会で仕事をする、あらゆる者を含んでいる。
【極真空手家の目標】
話しを戻せば、その晩年、大山先生が自身で言われていたように、極真空手家の目標とは、他を益する善き人間なのだ。
さて、極真空手はそんな空手に近づいたのだろうか?
一面的に見れば、組織の分裂により、カラテ家の数は増えた。しかし、空手道やカラテ家の質は、その数に見合うだけの質を兼ね備えているだろうか?
人に問う前に、自分にその問いを向けてみれば、あまりの恥ずかしさに、頭を覆い、逃げ出したくなる(自虐的だが、おそらく尻は隠れないだろう・・・実に間抜けな姿だ・・・)。
【現実はうつろい易く儚いものだからこそ】
私は最近、人生も終わりに近づいていると、いつも考えている。また、随分と好き勝手に生きてこれて、親や友人、社会や天に感謝しなければと思っている。だからこそ、こんな状態、生き方では死ねないとも思っている。勿論、後どのくらいの時間が自分に残されているかを知らない。しかし、1ヶ月あれば、いや1週間あれば、否、1日あれば、最高の生き方ができる可能性があるはずだ。
他方、元気で過ごせる300年程の時間が、人間に与えられていれば、かなりのことができると思うことがある。その真意は、理想の実現とは、それほど困難なもの、かつ時間がかかるということである。また一方では、長い年月をかけて形成された事物も、些細なことから瓦解するようにも見える。つまり、事物とは、長い時間かけて形成されながら、同時に破壊の時限爆弾が作動しているようなものではないだろうか(ゆえに、絶えずつくり直すことが必要だと思うのだが・・・)。
また、現実はうつろい易く儚いものだからこそ、人間はその思いを深くするのかもしれない。さらに、例え短い一生でも、人間の普遍性に気づき、それを活かすならば、人間として高い境地に立てるのではないかと思う。私の好きな黒沢明作品・映画のひとつ、「生きる」の主人公のように・・・。
【私は今】
私は今、渾身の力を振り絞る準備を始めている。その「思い」を、草壁先生に敬愛の念を込め、五行歌として記しておきたい(形式は五行連歌という私が勝手に創作した五行歌の形式である。それは五行歌ではないと、草壁先生に叱られるかもしれない・・・)。
~TSマークは、理想の空手道と想像上の鳥、そして拓真道のTSの3つを掛け合わせてイメージしている。再び、空手に高い理想を持って・・・。
【永劫の鳥】
その鳥は
古今東西の時空を
飛び越え
叡智を
運んでいく
その鳥は
人と人との心間を
行き交い
良心を
結んでいく
私は
カラテ武道が
叡智を運ぶ鳥に
なることを
望みたい
私は
カラテ武道が
良心を結ぶ鳥に
なることを
夢見たい
私は
人間には
良心(良知良能)という普遍性が
あることを
信じている
2014-10-13一部加筆
2014-10-13さらに加筆
2014-10-13再再加筆
●イメージ図
写真と五行歌に記した鳥とは、想像上の鳥であり、理想の空手武道の比喩です。写真はイメージ。
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永劫の鳥
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