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Channel: 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
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孫子の兵法

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孫子の兵法についてサッカーに絡めて書いたものを、孫子の兵法に関するものだけを抜粋、加筆修正して、掲載しておきたい。

私の孫子からの引用に対し、友人から質問があった。その質問の内容は、「孫子の兵法で云うところの「正」と「奇」の循環についての見解を」というものである。

以下は、その質問に対する私の見解である。正直言えば、私の見当違いかもしれないので、今後も再考を続けたい。あくまで、現時点での見解である。

【私の正と奇に対する見解】

「凡そ戦いは正をもって合し、奇をもって勝つ」

「戦勢は奇正に過ぎざるも、奇正の変は、賭けて窮む可からざるなり」

「奇・正の相生ずるは、循環の端無きが如し。孰か(たれか)能く之を窮めんや」


孫子は戦いの理法を説くにあたり、「正」と「奇」という言葉を用いた。
正と奇という言葉を理解するにあたり、私は以下のように理解したい。

正とは、戦闘力のこと。奇とは、戦術のこと(奇襲ではなく、高い創造性を有する戦術のこと)。
つまり、戦闘力を基盤として戦術は生み出される。ゆえに、自己の戦闘力を基盤にして相手に対峙し、相手の予想外の戦術を創出して勝つことを目指すことが、戦いの原則である。

また、戦術を用いた戦闘力は、その効果により、新たな戦闘力を生み出す。つまり、基本・基盤的な戦闘力(正)と応用・創造的な戦術(奇)とは、互いに相補的かつ相互作用的な関係にある。

ゆえに、正、即ち基本的な戦闘力が基盤となり、奇、即ち創造的な戦術が生まれる。

また、創造的かつ優れた戦術は、基盤としての戦闘力に影響し、その基盤を倍加することもある。
その倍加、強化された基盤には、さらに高次な戦術を創出する可能性が広がり、またそれを生み出す。「奇・正の相生ずるは、循環の端なきがごとし・・・」の意味とは先述のような構造を指していると私は思うのだが・・・。

ただし、創出された戦術を絶対視すれば、時間の経過とともに戦術は、「創造的な戦術」という位置を喪失する。そこが重要である。ゆえに戦術は同じように見えても絶えず、変化させなければならない。そこも孫子の兵法の説くところであると、私は考える。

私の戦略の定義は、戦闘力と戦術の組み合わせによってもたらされる態勢を如何に運用するかということを考えることである

ゆえに、その時々の彼我の情勢、戦闘力、戦術の創出可能性を勘案し、戦略は修正されなければならない。また、それこそが戦略である

さらに補足すれば、戦いの準備とは、戦いの原則・理法を基にした戦略を物差し(?もっといい例えがないかなあ・・・)にした、戦闘力の形成と戦術の創出でなければならない。

以上のように正と奇を定義すれば、理解し易いように思う。


最後に孫子の兵法について重要なことを書いておく。

私は、孫子の兵法が指し示す戦略とは、勝つことではないと思っている。そもそも孫子は、勝つと言うことをスポーツのように単純に捉えてはいない。あえて言えば、孫子の兵法は、如何に生き残るかの理法を説いているのだ(だからこそ、ワールドカップサッカーのような生き残り方式、即ちトーナメント戦では参考になるのだ)。

ゆえに、すべてをスポーツにおける戦いに、活用しようとすれば、やや無理があるのは否めない。
しかしながら、スポーツにおける真に偉大なチャンピオンは、長期にわたり、負けないチャンピオンであると私は思っている。また、戦いに勝利するための準備として、戦略を持ち、戦闘力を強化し、創造的な戦術を生み出し続けるという考え方は、スポーツにも活用できる。
先人に大変失礼だが、旧日本軍は、その解釈を間違えた(僭越至極、御免)。

そのようなことを念頭において、孫子の兵法を考えたら良いと、私は考える。


〈参考文献〉
孫子(守屋洋/三笠書房)孫子(守屋淳/日本経済出版社)孫子(浅野裕一/講談社学術文庫)
孫子(杉之尾宣生/芙蓉書房出版)孫子・戦略・クラウゼビッツ(守屋淳/プレジデント社)
最強の孫子(守屋淳/日本実業出版社)孫子・呉子(守屋洋/プレジデント社)
戦略論~間接的アプローチ(リデルハート/森沢亀鶴訳/原書房)
精神と自然(グレコリー・ベイトソン/佐藤良明訳/新思索社)/その他

【蛇足ながら】
私には、孫子の解釈で有名なリデル・ハートの「ダイレクト・アプローチ」「インダイレクト・アプローチ」という概念が念頭にあった。ゆえに先述のような、独自解釈を展開するにあたり、苦しかった(間違っていたら恥ずかしい・・・)。

しかし、「抛瓦引玉(拙い意見を投げ出し、優れた意見を出させる)」のつもりで意見を述べた。
孫子の兵法については勉強会仲間と再考を続けたい。

また、イスラエル、パレスチナの情勢が動いている。
私にはどうすることもできないが、簡単に片付けることもできない。
今後、我々を取り巻く世界に何が起こるかわからない。ゆえに日本も戦闘力(軍事力のみを指すのではない)を強化し守りを固めなければ・・・。経済、外交、軍事の面のみならず、教育、社会制度の整備等、あらゆる面で。


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