ワールドカップサッカーと孫子の兵法~その3
ワールドカップサッカーを観戦しながら、私の脳裏には「孫子の兵法」があった。そして、各チームの戦いを孫子の兵法を物差しにし、観ていた。
以下は、サッカー素人の私見である。あくまでファンの戯れ言だと思って、大目に見て欲しい。
先ず、およそ戦いは攻撃のみが大事なのではなく、守りながら攻める。攻めながら守ることである。守りと攻めを2分するかのような考え方には、正直、首を傾げる。また、個の力が弱いからチームサッカーで、強い個の存在するチームは、チームプレイはできない??というような考え方に囚われているのではと感じた。
これからは、日本人も強い個を育てるべきだ。そして、その上でチームプレイだ。そもそも、組織力(チーム力)がなければ、サッカーは勝てない。この辺は「これからの日本人論」として展開したいところだ。
また、アルゼンチンがメッシ頼りのチームと言うが、私にはそのように見えなかった。チームプレイもできていたではないか(私には、メッシがアルゼンチンチームの連係プレイの演出者のような存在に見えた)。
具体的には、決勝では、アルゼンチンチームはメッシだよりではなかった。むしろ、メッシに相手チームの意識が向かうことを利用したようにも見える。もちろん、予選リーグでは、メッシの得点がなければ、勝ち上がれなかったかもしれない。しかし、アルゼンチンチームを「メッシ頼みのチーム」と言えば、それは選手に失礼だ。今回のアルゼンチンは、そんな消極的なチームではなかったように思う。
さて、孫子の兵法の引用に対し、友人から質問があった。その質問の内容は、「孫子の兵法で云うところの「正」と「奇」の循環についての見解を」というものである。
以下は、その質問に対する私の見解である。正直言えば、私の見当違いかもしれないので、今後も再考を続けたい。あくまで、現時点での見解である。
【私の正と奇に対する見解】
「凡そ戦いは正をもって合し、奇をもって勝つ」
「戦勢は奇正に過ぎざるも、奇正の変は、賭けて窮む可からざるなり」
「奇・正の相生ずるは、循環の端無きが如し。たれか能く之を窮めんや」
孫子は戦いの理法を説くにあたり、「正」と「奇」という言葉を用いた。
正と奇という言葉を理解するにあたり、私は以下のように理解したい。
正とは、戦闘力のこと。奇とは、戦術のこと(奇襲ではなく、高い創造性を有する戦術のこと)。
つまり、戦闘力を基盤として戦術は生み出される。ゆえに、自己の戦闘力を基盤にして相手に対峙し、相手の予想外の戦術を創出して勝つことを目指すことが、戦いの原則である。
また、戦術を用いた戦闘力は、その効果により、新たな戦闘力を生み出す。つまり、基本・基盤的な戦闘力(正)と応用・創造的な戦術(奇)とは、互いに相補的かつ相互作用的な関係にある。
ゆえに、正、即ち基本的な戦闘力が基盤となり、奇、即ち創造的な戦術が生まれる。
また、創造的かつ優れた戦術は、基盤としての戦闘力に影響し、その基盤を倍加することもある。
その倍加、強化された基盤には、さらに高次な戦術を創出する可能性が広がり、またそれを生み出す。「奇・正の相生ずるは、循環の端なきがごとし・・・」の意味とは先述のような構造を指していると私は思うのだが・・・。
ただし、創出された戦術を絶対視すれば、時間の経過とともに戦術は、「創造的な戦術」という位置を喪失する。そこが重要である。ゆえに戦術は同じように見えても絶えず、変化させなければならない。そこも孫子の兵法の意味するところであると、私は考える。
私の戦略の定義は、戦闘力と戦術の組み合わせによってもたらされる態勢(全体における自己の位置取りと自己内部の情況)を如何に運用するかということを考えることである。
ゆえに、その時々の彼我の情勢、戦闘力、戦術の創出可能性を勘案し、戦略は修正されなければならない。また、それこそが戦略である。
さらに補足すれば、戦いの準備とは、戦略を物差し(?もっといい例えがないかなあ・・・)にした、戦闘力の形成と戦術の創出でなければならない。
以上のように正と奇を定義すれば、理解し易いように思う。
最後に孫子の兵法について重要なことを書いておく。
孫子の兵法指し示す、戦略とは勝つことではない。そもそも勝つと言うことをスポーツのように単純に捉えてはいない。あえて言えば、孫子の兵法は、如何に生き残るかの理法を説いている。
ゆえに、スポーツにおける戦いに、活用しようとすれば、やや無理があるのは否めない。
しかしながら、スポーツにおける真に偉大なチャンピオンは、長期にわたり、負けないチャンピオンであると私は思っている。また、戦いに勝利するための準備として、戦略を持ち、戦闘力を強化し、創造的な戦術を生み出し続けるという考え方は、スポーツにも活用できる。
先人に大変失礼だが、旧日本軍は、その解釈を間違えた(僭越至極、御免)。
そのようなことを念頭において、孫子の兵法を考えたら良いと、私は考える。
【蛇足ながら】
イスラエル、パレスチナの情勢が動いている。
私にはどうすることもできないが、簡単に片付けることもできない。
今後、我々を取り巻く世界に何が起こるかわからない。ゆえに日本も戦闘力(軍事力のみを指すのではない)を強化し守りを固めなければ・・・。経済、外交、軍事の面のみならず、教育、社会制度の整備等、あらゆる面で。
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ワールドカップサッカーと孫子の兵法〜その3
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